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2011年1月1日

2011.01.01

音を描く  羅川真理茂/宮田絋次/かわぐちかいじ

今年もよろしくお願いします。見ての通り、正月からいつもと変わらずやっております(笑)


最近は腰を据えてマンガ読む時間もあまりない上に折からの財政事情もあって、単行本の購入を絞るべく結構な作品数を切ったつもりだったのですが、溜めた本屋のレシートを整理してみると一昨年より昨年の方が出費が多く、なんでやねんと頭を抱えております。これってストレスの反映?

そんなわけで(どんなわけで)表題です。紙面から音が響いてこない上に、聴覚で得られるイメージを全て視覚イメージに置き換えることなどできないため、音楽をテーマにしたマンガはいつまでも完成することはないでしょうが、同じく紙を媒体とする小説に較べれば表現手段に富むこともあり、読者の持つ音(楽)体験を上手く刺激することでマンガのコマ間にも音が見えてくるのではないか、と思うわけです。

初めて音が流れてきたと思った作品は冨士宏「午後の国物語」の第2話”ブルベリー”でした。遺跡の如き過去のテクノロジーの残骸から作られた二足歩行ロボットが、思わぬ自律行動で故郷の集積所にたどり着き、メモリに潜んでいた音楽を奏で始める…というエピソードで、メカニズムの中に遺された先人達の音の記憶が数珠繋ぎに広がってゆく様は今読んでもなかなか印象的です。ちょっと前なら さそうあきら「神童」が抜きん出ていました。近作では のだめ・BECKがいいところまで行ったと思うのですが、演奏シーンで求められるイマジネーションがちょっと具体的過ぎたか、音楽に関するこちらの引き出しの貧弱さを思い知らされた感じでした。どういう音を想起するかは読み手次第であり、描く方も色々悩まれるんでしょうね。以下、音の表現法がそれぞれ異なる昨年刊行の作品を取り上げてみました。


ましろのおと 1~2巻 羅川真理茂 講談社コミックス

ホームグラウンド”花とゆめ”とは客層が全然違うであろう月刊マガジン連載でも全く違和感がない羅川先生、流石です。モチーフとなった津軽三味線は近年若手が多く活躍もしているし、その筋の巨人・高橋竹山のCDを好んで聴いていたこともあり、割と音のイメージを持ち易い感じ。人物描写と構成力に関してはベテランだけあって安定感抜群な上に、三味線の音色がオーケストラやバンドサウンドより音がシンプルなところが表現しやすいのでしょうか、イメージが無理なく感情移入しやすい印象でした。2巻でライバルらしき人物が登場、展開が読めないでもないですが、語り口が上手いので次巻がもう楽しみです。音表現とは全然関係ありませんが、複数いるヒロイン的な女性/女の子がことごとく可愛い(幅広い意味で)のは少年誌だから、というわけではなく元々羅川先生の作風がそうなんですよね。マンガかくあるべし(笑)

※同じく三味線を題材としたマンガ「なずなのねいろ」は第一巻しか読んでおらず… ちょっと狙い過ぎな感じで2巻に手が付かないままです。せっかくなので、改めて読み較べてみたい気もします。


ききみみ図鑑 宮田絋次 エンターブレイン・ビームコミックス

作者はこれが初単行本らしく絵のタッチはまだ初々しいですが、登場人物の涙の見せ方が印象的。具体的な意味で”音が視える”というアイデアの話もいいのですが、楽器をモチーフとした第2話「奪われた歌」の表現が素朴で、小品ならではの味わいが私は好きです。”音が視える”ことの定義を逆手に取った第8話「凪の音」は、第1話へのオマージュでしょうか。こういったテーマを絞りつつバラエティに富んだ一冊本は大好きで、人にも勧めやすいですよね。


僕はビートルズ 1~2巻 かわぐちかいじ・藤井哲夫 講談社モーニングKC

これも一応音楽がモチーフ。しかし音楽が主題のひとつでありながら、あまり音のイマジネーションが沸いてくるものではありません。リアリスティックな絵柄とストーリー、確固たるビートルズナンバーのイメージというか音そのものが、力強過ぎて読み手の想像力を拒絶します。もちろんそれが悪いわけではなく、表現法や作中での音楽の扱い方の違いでここまで変わるということなんですが。話の展開上、未知のビートルズナンバーが今後作中に登場する気配があるけれど、作者はそれをどう表現するのか。誰も聴いたことのない音のマンガ表現はとても難しく、先に挙げた神童やBECKでも厳しいものがありました。ハードルは高いですが、作者の力量も抜きん出ています。こちらのイメージをどう刺激してくれるのか楽しみです。


”のだめ”最終巻まだ手つかずです。願わくば、千秋との距離感は第1巻のそれを思い出しつつ終わっていただきたい。のだめはやっぱり変なコでないと、なんてね。

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