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2019.03.03

一冊完結本の世界 佐々木淳子/須藤真澄/とり・みき/都戸利津/朱戸アオ

一冊で物語が完結するマンガが好きです。何十巻も続く大長編な名作もあるけれど、語り過ぎずに完成された一冊の世界は生命球のように美しく、描かれなかった部分への想像力も自然と掻き立てられるというもの。調べてみたら こんなサイト もあり近作はそちらを見ていただくとして、今や忘れ去られそうな名作を挙げてみます。いずれも単行本を新品で手に入れることはできず、いま読む方法は古書か電子書籍になるわけですが、著者への敬意を込め、できれば電子書籍で読んでいただきたく。

SHORT TWIST 佐々木淳子 1988年

意識だけが時間跳躍するという斬新なアイデアの元、主人公・操の”意識”の時間軸に沿って語られる構成で、天才物理学者・拓美と謎の刺客・レニーが ある目的を持って対峙する。そして壮大ながら余韻を残す幕引き。「ダークグリーン」で見事な異世界を構築した佐々木先生の面目躍如。


アクアリウム 須藤真澄 1994年(2000年再版)

金魚の”おじいちゃん”が住まう世界に意識を繋ぐ主人公・杢子と17歳年上のおば=おねえちゃん・しずかの5年ごとに語られる日常描写。牧歌的な絵柄とお話は世界の秘密の全てを語ることもなく、ただ心地よく進んでゆきます。出会って四半世紀、いまだにオールタイムベストの一冊。(映画化もされました)


冷食捜査官(1) とり・みき 2008年

人々が合成食だけを許され”食料統制”が行われる中、かつての生きた素材による食事を求めて冷凍食品=冷食が裏で取引される世界。ハードボイルドなセリフを吐きながら小ネタ満載のコマの中を冷食捜査官が狂言回しの如く動き回り、止まらぬ含み笑いとともに意外なヒューマンドラマで魅せる、良い意味で一筋縄ではいかない作品。第1巻の表記はあるものの、最初の一話が掲載されてから単行本化まで17年かかっていることを考えると続刊は何時になることやら。ということで実質、一冊本です。


環状白馬線 車掌の英さん 都戸利津 2009年

当時たいへん評判を呼んだ名作。見事な構成に考え抜かれたネーム、すべてが優しい世界。迷わず読むべし。紙の本ないのかー(悲)


Final Phase 朱戸アオ 2012年

パンデミックもの、というジャンルがあれば、いの一番に思い出される作品がこれ。扱われるウイルスは全く一般的ではないのに、説明臭いセリフもなくミステリ作品のように一気に読ませる技量がすごい。医療関係の描写も的確。その後、作者は講談社の青年誌に移籍して「リウーを待ちながら」で本作をリブート(物語の構図と主要人物の造形から確信)。今年4月からはインハンド・シリーズが 実写ドラマ化 とあり、作者いよいよブレイクか。本作の再版に期待。
 


 

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