カテゴリー「漫画」の記事

2019.03.03

一冊完結本の世界 佐々木淳子/須藤真澄/とり・みき/都戸利津/朱戸アオ

一冊で物語が完結するマンガが好きです。何十巻も続く大長編な名作もあるけれど、語り過ぎずに完成された一冊の世界は生命球のように美しく、描かれなかった部分への想像力も自然と掻き立てられるというもの。調べてみたら こんなサイト もあり近作はそちらを見ていただくとして、今や忘れ去られそうな名作を挙げてみます。いずれも単行本を新品で手に入れることはできず、いま読む方法は古書か電子書籍になるわけですが、著者への敬意を込め、できれば電子書籍で読んでいただきたく。

SHORT TWIST 佐々木淳子 1988年

意識だけが時間跳躍するという斬新なアイデアの元、主人公・操の”意識”の時間軸に沿って語られる構成で、天才物理学者・拓美と謎の刺客・レニーが ある目的を持って対峙する。そして壮大ながら余韻を残す幕引き。「ダークグリーン」で見事な異世界を構築した佐々木先生の面目躍如。


アクアリウム 須藤真澄 1994年(2000年再版)

金魚の”おじいちゃん”が住まう世界に意識を繋ぐ主人公・杢子と17歳年上のおば=おねえちゃん・しずかの5年ごとに語られる日常描写。牧歌的な絵柄とお話は世界の秘密の全てを語ることもなく、ただ心地よく進んでゆきます。出会って四半世紀、いまだにオールタイムベストの一冊。(映画化もされました)


冷食捜査官(1) とり・みき 2008年

人々が合成食だけを許され”食料統制”が行われる中、かつての生きた素材による食事を求めて冷凍食品=冷食が裏で取引される世界。ハードボイルドなセリフを吐きながら小ネタ満載のコマの中を冷食捜査官が狂言回しの如く動き回り、止まらぬ含み笑いとともに意外なヒューマンドラマで魅せる、良い意味で一筋縄ではいかない作品。第1巻の表記はあるものの、最初の一話が掲載されてから単行本化まで17年かかっていることを考えると続刊は何時になることやら。ということで実質、一冊本です。


環状白馬線 車掌の英さん 都戸利津 2009年

当時たいへん評判を呼んだ名作。見事な構成に考え抜かれたネーム、すべてが優しい世界。迷わず読むべし。紙の本ないのかー(悲)


Final Phase 朱戸アオ 2012年

パンデミックもの、というジャンルがあれば、いの一番に思い出される作品がこれ。扱われるウイルスは全く一般的ではないのに、説明臭いセリフもなくミステリ作品のように一気に読ませる技量がすごい。医療関係の描写も的確。その後、作者は講談社の青年誌に移籍して「リウーを待ちながら」で本作をリブート(物語の構図と主要人物の造形から確信)。今年4月からはインハンド・シリーズが 実写ドラマ化 とあり、作者いよいよブレイクか。本作の再版に期待。
 


 

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2018.05.20

言葉空間と、その外側  池辺葵/田村由美

仕事で言葉を弄した後というのは、感性が言葉に縛られるのか全ての毛穴が塞がったかのように趣味のインプットが身体に沁み込まず、コミック積ん読やビデオ録るだけ見ずの要因となるわけで、嗚呼インドアで良いから二週間ほどバカンスいただきたいもの。

ヒト社会が言葉で形作られているのは確かで、論理もしくは言霊の届く範囲でヒトは理解もしくは反発しあいつつ生き永らえているけれど、デジタル画像の解説によく出てくる色空間のこんな絵の如く、何らかの形でヒトが認識できる空間の広さに較べると言語で表現できる範囲には限りがあり、言葉にならない感情などは絵やら音やら別の表現法で補われるのだろうと愚考します(ケツ青いですよね)。二十代の頃、訳も判らず読了した神林長平の小説(作品名失念)で 創想力>創言力 という関係性を知らされて以来の妄執です。


プリンセスメゾン 第5巻 池辺葵 ビッグコミックスピリッツC

3月発売、2ヶ月寝かせて読了。直訳「マンションのお姫さま」もマンション買えたしドラマ化も済んだし、もう終わるものと思っていたら、持井不動産の面々は購入後のアフターフォローも万全な体制でした。行間ならぬコマ間を読むタイプの作品ですが間の取り方が上手い上に、淡々とした中にもコミカルな表現あり、前巻からのブランクが長くても読み易く癒されます。このまま沼ちゃんが新しい部屋と新しい街に馴染むまで物語は続くだろうし続けて欲しい。


ミステリと言う勿れ 第1巻/第2巻  田村由美 フラワーコミックスアルファC

田村先生は(7SEEDS読んでなくて)前作イロメンから2年ぶりくらいでしょうか。この表紙絵で帯に”アタマ爆発!!!”とか書かれたら、一体何事と買わざるを得ません。(表紙買いならぬ帯買いは私史上初かも) イロメンもそうでしたが登場人物が小ネタを含め多弁で丁々発止、それでリズミカルに読ませる上に、題名で言う割に がっつりミステリ仕立ての仕掛けと謎解きが快感で、二冊いっきに読んでしまいました。主人公の整くん(何と読むかはセルフチェックで)、抱えた何かが おぼろげに見えそうで見えないのも気になります。インターバル4ヶ月計算なら次巻は夏過ぎ。楽しみです。

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2014.11.16

読み返す作家、再び 穂積/末次由紀/大谷紀子

うせもの宿 第1巻 穂積 小学館フラワーC α 429円税抜

凄惨さやリアル描写に頼ることなく、清廉な語り口を保ちながらも鋭い切れ味に衝撃を受ける作品はあるもので、私的には吉野朔実の中編連作「いたいけな瞳」、大島弓子「つるばらつるばら」「秋日子かく語りき」など角川•あすかコミックスで出した一連の作品あたりが思い出され(古い作品例しか無いのは気にしないように)、いわゆる少女マンガ系女性作家に多い気がします。
デビュー作「式の前日」が大層話題となった作者。 新人らしからぬ画力の高さ(最近はこの程度、当たり前なのかもですが)のみならず、多くを語らないまま進む展開の最後の最後に視野がパッと開ける爽快感、そしてその意味を確かめるために思わず再読せずにはいられない…というのは初めての体験でした。その後の初連載作「さよならソルシエ」はトリッキーな感じが少なめで油断していましたが、またしても今作で作者の罠に掛かってしまい、途中で巻頭から読み返すはめに。読み返すと、1,2話で語られていながら読み取れなかったことの意味が一気に見えてきます。ただの和風ファンタジー連作ではありません。でも、あまり構えて読むものでもありません。マンガ読みの心意気として皆さん、うまく騙されていただきたい。いや、上手いなあ…


クーベルチュール 第2巻 末次由紀 講談社BE LOVE KC 429円税抜

ちはやふる」で足りないラブ成分を、作者がこちらで補給しているように思えてなりません(笑) 3番目に収録された真面目な歯科医青年のエピソードが楽し過ぎて、なんと途中に少女誌掲載らしからぬ四段ぶち抜きが。さすが「ちはやふる」で少年マンガ家やってるだけのことはありますね(違います) 「甘党…強敵だ」で予想される展開にエピソードを五割増しで盛り込んでくるのは流石。ちょっと長いと思ったら、この話だけ50P超えてましたよ。そして読後は涙と勇気をくれる。巻数少ないし間違く面白くて、人に薦め易い逸品です。


すくってごらん 第1巻 大谷紀子 講談社BE LOVE KC 429円税抜

もう続巻出ているし、初めて読む作家で第1巻だけで語るのは危険かなーと思いつつ、主人公の男子のキャラが立っているのと、その才能の萌芽の見せ方が良かったので期待してます。どこまで金魚すくいの深淵を語れるかは未知数ですが、作者の技量は確かに思えるので続きも買うでしょう。件の電話ボックス金魚鉢、出てけぇへんかなー。

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2012.04.30

油断ならないTailpiece/おがきちか Landreaall

GW前半、現在進行形で臥せっております。風邪が昨夕から今朝にかけてピークだった模様で、何もできないのをいいことに長編マンガの再読に勤しんでおりました。新作を読むのはまた今度、それはそれで集中力を使うので。

Landreaall(ランドリオール) 19巻 おがきちか 一迅社

1月発売の最新刊。何度か取り上げています。この作品、至るところに伏線が張ってあるので油断なりません。何気ないセリフや仕草が後の大きな物語のうねりに組み込まれることがしばしばあって、しかも気付いた時に原典を探し出すのが大変です。今回、隠し植物室でお馴染みウィフテッド教授の奥方・ロクサーヌの名もどこかで見たような見なかったような。槍試合の上手いワイアット、パーヴェルも、スピンドル事件の時に名前は出てるんですよね。もともと超越した主人公一人が活躍する物語より、登場人物全員の個性が映える群像劇が好きなので、このようにサブキャラまでが大事にされていると分かる作品は総じて好きです。そして ”Tailpeice”と題されたおまけマンガが只のおまけではなく、伏線や物語の解釈で必要な背景を過不足なく教えてくれるのが用意周到過ぎます。
   
面白い作品の骨格=世界観を構築するのも才能ですが、マンガは小説と異なり、多くは長期の連載の末に完結するという製作過程を取らざるを得ないため、物語を紡いでゆく上でそれは緻密な気配りを必要とするであろうと考えます。物語を緻密に作り込めばそれだけ矛盾を孕む可能性は高まるでしょうし、伏線を回収し損なっても、単行本書き下ろしという体裁を取れる小説とは違って連載作品は修正が利きません。連載時に気付けば単行本化までに可能なこともあるのでしょうが。ああ、その役目がTailpieceなんでしょうか。

いずれにせよ、ここまで緻密に物語を進めることができるのは、おがき先生自身がよほどこの作品を愛して過去の記載を血肉としているか、余程のブレーンが読み込んでサポートしているのではないかと思います。今のところ、読む気が削がれるような致命的な矛盾は私にはわからず、とことん読み込んで楽しめる作品として味わい尽くしております。一言で説明すると『カッコイイ王子とお姫様が大活躍するファンタジー冒険奇譚』とありきたりで見過ごされがちなのかも知れませんが、 読者をティーン女子向けだけに留めない骨太な物語、シャープな殺陣の描写、画力もあり、そして女の子は可愛く(これ重要)、総合力では大流行りしたハガレンをも凌いでいると思うのです。事象と心象を重層的に読ませる、少女マンガ家独特の文脈と構成力。だから深い。(ハガレンのマンガは私も大好きですが)各マンガ賞の選考委員の皆様にはもっと気付いて欲しいですね。

メインタイトルの頭文字に絵柄がかぶって読めません。大胆過ぎる構図。

これまで限定版・ドラマCDの類には手を出していませんが、またそれぞれに重要な小ネタがあるんやろなあ…主題に影響はないだろうと思いつつ、気にはなりますね。今度作者がサイン会で来阪するようで、勢いで買ってしまいそうです。

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2012.03.20

法事に日常茶飯事に

 あまり関連もないですが、先週末のネタを連々と。

 祖母は明治45年の元旦生まれ。日本女性の平均寿命を越え天寿を全うしたのですが、今年は七回忌にあたり、実家で法要がありました。お世話になっている住職は齢82歳、膝を痛めて正座はできないものの、まだまだ現役で檀家廻りをしておられます。実家にも付き命日ごとに来ていただいているとのこと。これまでも事あるごとに、その読経の声を聞いていたのですが。
7th
 今回、改めてその響きが独特であることに気付きました。朗々と謳い上げるような美声ではなく、むしろ潰れて掠れたような声を基調に、どこが音を立てているのか、風鳴りのような高い音を時に交え、さながらホーミーのような響きです。聴き惚れているうちに小一時間が過ぎ、正座の足の痺れも気になりませんでした(笑)。
 世の中には正に音楽のような読経も存在するようですが、そこまであざとく聴かせるための発声とも思えず。おそらく年輪のように時間をかけて練られた発声なのだろうと感じました。直接伺うことはできなかったものの、一朝一夕で真似できるものではないでしょう。高齢でいらっしゃいますが実家が今しばらくお世話になると思われ、次の機会が楽しみです。
 … … …
 奈良から法事に来ていた姪っ子姉妹は相変わらず銀魂’好き。3月で終了と聞き殊更残念がっていたのですが、お姉ちゃんの方が以前貸してあげた小玉ユキの単行本を面白がっていたので、代わりに「坂道のアポロン」アニメ化を勧めておきました。菅野よう子の名前くらいは知っていたようです。しかし去年の今頃は「大学に行ったらコスプレしたい」とか言っていたのですが、それほど濃い趣味には至っていない模様。忙しそうやからなぁ。
 … … …
 運動会その他イベントで使用する、便利な高倍率ズームのデジカメをそろそろ新調したくて、使用頻度が減っているデジカメ三台を某ネットオークションに出品したところ、買い値の半額くらいで売れました。いずれも元が中古なので、まずまずの成績です。これに一万円ほど上乗せして、AFと暗所撮影と動画に強いこれを買う予定。
Auction_3
 今回の発送先が面白くて、埼玉・沖縄・そして神戸のホテル(宿泊先)とバリエーションに富んでいました。遠方なら北海道にも発送したことが過去にありますが、日時指定で宿泊先ホテルを言ってきたのは初めてでした。旅先で使うつもりなのでしょうか、メモリーカードは出品物の中に入っていないので少々心配だったり。
 出品したどのカメラも愛着はあるものの、ドライボックスで眠るがままでは機械として旬な時期を逃すことになります。使ってもらってこその道具、もらわれた先での活躍を祈りつつ発送しました。いい写真を撮ってもらってな~
 

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2011.12.18

船戸明里/諌山創 他

Under The Rose 第7巻 船戸明里 幻冬舎コミックス

近年コミックスに関しても”積ん読”がひどく、ましてや重い展開が容易に想像されるコレにはなかなか手が出ないままに3ヶ月放置。でも、読み出したら止まりません。色々手詰まりとなったウィリアムに逆襲のブレナン、ロウランド伯爵の我が儘に過ぎる行動と最終頁の意外な展開、もうお腹いっぱいで時間は2年後くらいが丁度いい感じです(笑)まあそれは冗談として。

改めて遡り第1~2巻・冬の物語篇を再読したんですが、8年も前から船戸先生は全くブレずにこの愛憎入り乱れながらも美しい世界を紡ぎ続けているのだなあと実感。絵はこの上なく美麗、それでもイラストチックにならずマンガとしてのダイナミズムを失わず時にコミカルに時に精細に動き、いっぽう物語は人物描写が精緻を極め、それゆえに解り辛く決してとっつき易い作風ではありません。単行本が売れているとも思えませんが、こうした作品を掲載し続ける雑誌もすごいし負けずに描き続ける作者もすごい。

こうした作品こそ、もっと世に知られ読まれるべきだと思うのですが、世のマンガ評論を生業とする方々はどうお考えなのでしょう?もっと陽の目を見て欲しい作品です。


進撃の巨人 第6巻 諌山創 講談社コミックス マガジン

数巻モタついた感があったものの物語が再び動き出して、作者も余裕が出てきたか小ネタのギャグがそこかしこ。ハンジ分隊長のぶっ飛んだ言動が楽しいです(こわいけど)。映画化については何とも言えませんが、次巻が楽しみなのは確か。

他、久々に伊藤伸平先生の新刊「まりかセヴン」を読みましたが、これも大変滋味でした。みんな特撮好きなんやなあ。ガンスリ14巻は読んだものの自分の内で消化し切れず。数巻遡って再読しなければ勿体無い感じです。

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2011.08.07

超人ロック・風の抱擁(長期連載作品の再評価について少し)

超人ロック 風の抱擁 第1巻 聖悠紀 少年画報社YKコミックス

宇宙史と共に人生を歩むほど長寿のロックが、特殊能力はあれど普通の寿命しかない女性・ミラと連れ合いとなり、彼女と晩年を過ごす描写から始まる渋い導入部です。これまで見覚えのないロックのドクター姿や、ESPの教官として(嬉々として)暴れまわる姿がとても新鮮。帯に”新シリーズ始動”と書いてあるものの、実際には今はなきビブロス社から刊行され、現在はメディアファクトリーから復刊されている2冊の単行本「カデット」「星辰の門」の続きとなる物語。多くの登場人物やエピソードが引き継がれているので、知らなくても面白いけれど読んでいれば更に楽しめます。10年も前に刊行された本ですが、忘れずに続きを描いてもらえるのはファンとして嬉しいですよね。
回想シーンというかメインストーリーの方の若いミラと、現在の時間軸で語られる年老いたミラ。若返りの技術が一般的なようで見た目は同じなんですが、佇まいは明らかに描き分けられているあたり流石。上官であるロックに説教するジャイルズいかにも軍曹(実はパティシエ?)がいい味出してます。ヨシノ元長官も相変わらず元気で何より。過去の登場人物が年老いつつ活躍することができるのも、長寿シリーズならではの楽しみです。来年には商業誌デビュー40周年を迎えられる大ベテラン、ほぼ同世代の和田慎二先生は鬼籍に入ってしまわれましたが、まだまだロックの続きを読みとうございます。これからもどうかお元気でいていただきたいものです。

多くのマンガ評論家の先生方が、こういう長寿作品をどう評価されているのか聞いてみたいですね。ネットや新聞雑誌でレビューを受ける作品は新作・新人がほとんどで、長期連載の再評価などは滅多にお目にかかれません。マンガは連載されながら単行本が続々と刊行されてゆくので、一冊本でない限り、最初の1巻だけで全てを語ることは不可能です。最初は大したことなくても終わってみたら大傑作みたいな作品も過去にはあるはずですし、連載開始当初やアニメ・ドラマ化の熱が去った後もコツコツと物語を紡ぎ、面白い作品を長く描き続けておられる作家さんは沢山います。そういう作品・作家をレスキューするのも評論家の仕事だと思うのですがどうでしょう。発表の場を提供する出版・ネット関係者がいないだけかも知れませんが、日本を代表する”マンガ読み”の先達の、そういうイイ仕事をもっと見てみたいです。

…それにしてもフォローする漫画家さん達の平均年齢が本当に高くなってきて…自分もええ年なので当たり前といえばそうなんですが…、少女漫画方面の”24年組”の方々は上記の聖先生や和田先生よりも数年上、ガラスの仮面の美内すずえ先生で同期くらい、若い若いと思っていた絶チルの椎名高志先生やケロロの吉崎観音先生も既にデビュー20年を越えていて少々吃驚です。羽海野チカ先生や荒川弘先生あたりも若手と言うより中堅だし、果たして若い世代の作家の感性に今後ついてゆけるのか少々心配だったり。

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2011.04.28

池辺葵「縫い裁つ人」/タイム涼介「アベックパンチ」

色々あるけれど、今とりあえず挙げておきたい二冊のみ。関連性まったく無し。


「縫い裁つ人」第1巻 池辺葵 講談社 KC Kiss

期待の新鋭らしいけれど全く知らず、ネット書評を読んで試してみたら素晴らしかった! 朴訥とした絵と独特の間で綴られた、完成された世界。それでいてキャラクターにも思い入れができ突き放された感じがしない。つまり、とっつき易い。是非このままのペースで描き続けて欲しい一方で、少ない巻数で完結すれば完成度が更に上がるだろうとも思うのです。映画化も無理なくいけそうやなあ。


「アベックパンチ」 完全版・中巻 タイム涼介 エンターブレイン ビームコミックス

旧版の第2巻が出てから3年近いブランクが空いた理由はわからないけれど、完全版と名打った新版になっても中巻から買えば話がダブらないのはとても良心的。従来の2巻分相当の一冊が800円そこそこというのも破格に安い。
虚構であるはずの格闘技”アベック”が持つリアリティが、舞台装置として十二分に機能していると思います。愛しく美しく、そして男臭い物語。詩的なネームがクサくならないのが不思議。いちど止まったかに見えた物語が再び動き始め、目が離せません。来月の下巻完結編発売がホント待ち遠しい。でも映画はちょっと不安です。ヒラマサ役の腕細過ぎ…

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2011.01.01

音を描く  羅川真理茂/宮田絋次/かわぐちかいじ

今年もよろしくお願いします。見ての通り、正月からいつもと変わらずやっております(笑)


最近は腰を据えてマンガ読む時間もあまりない上に折からの財政事情もあって、単行本の購入を絞るべく結構な作品数を切ったつもりだったのですが、溜めた本屋のレシートを整理してみると一昨年より昨年の方が出費が多く、なんでやねんと頭を抱えております。これってストレスの反映?

そんなわけで(どんなわけで)表題です。紙面から音が響いてこない上に、聴覚で得られるイメージを全て視覚イメージに置き換えることなどできないため、音楽をテーマにしたマンガはいつまでも完成することはないでしょうが、同じく紙を媒体とする小説に較べれば表現手段に富むこともあり、読者の持つ音(楽)体験を上手く刺激することでマンガのコマ間にも音が見えてくるのではないか、と思うわけです。

初めて音が流れてきたと思った作品は冨士宏「午後の国物語」の第2話”ブルベリー”でした。遺跡の如き過去のテクノロジーの残骸から作られた二足歩行ロボットが、思わぬ自律行動で故郷の集積所にたどり着き、メモリに潜んでいた音楽を奏で始める…というエピソードで、メカニズムの中に遺された先人達の音の記憶が数珠繋ぎに広がってゆく様は今読んでもなかなか印象的です。ちょっと前なら さそうあきら「神童」が抜きん出ていました。近作では のだめ・BECKがいいところまで行ったと思うのですが、演奏シーンで求められるイマジネーションがちょっと具体的過ぎたか、音楽に関するこちらの引き出しの貧弱さを思い知らされた感じでした。どういう音を想起するかは読み手次第であり、描く方も色々悩まれるんでしょうね。以下、音の表現法がそれぞれ異なる昨年刊行の作品を取り上げてみました。


ましろのおと 1~2巻 羅川真理茂 講談社コミックス

ホームグラウンド”花とゆめ”とは客層が全然違うであろう月刊マガジン連載でも全く違和感がない羅川先生、流石です。モチーフとなった津軽三味線は近年若手が多く活躍もしているし、その筋の巨人・高橋竹山のCDを好んで聴いていたこともあり、割と音のイメージを持ち易い感じ。人物描写と構成力に関してはベテランだけあって安定感抜群な上に、三味線の音色がオーケストラやバンドサウンドより音がシンプルなところが表現しやすいのでしょうか、イメージが無理なく感情移入しやすい印象でした。2巻でライバルらしき人物が登場、展開が読めないでもないですが、語り口が上手いので次巻がもう楽しみです。音表現とは全然関係ありませんが、複数いるヒロイン的な女性/女の子がことごとく可愛い(幅広い意味で)のは少年誌だから、というわけではなく元々羅川先生の作風がそうなんですよね。マンガかくあるべし(笑)

※同じく三味線を題材としたマンガ「なずなのねいろ」は第一巻しか読んでおらず… ちょっと狙い過ぎな感じで2巻に手が付かないままです。せっかくなので、改めて読み較べてみたい気もします。


ききみみ図鑑 宮田絋次 エンターブレイン・ビームコミックス

作者はこれが初単行本らしく絵のタッチはまだ初々しいですが、登場人物の涙の見せ方が印象的。具体的な意味で”音が視える”というアイデアの話もいいのですが、楽器をモチーフとした第2話「奪われた歌」の表現が素朴で、小品ならではの味わいが私は好きです。”音が視える”ことの定義を逆手に取った第8話「凪の音」は、第1話へのオマージュでしょうか。こういったテーマを絞りつつバラエティに富んだ一冊本は大好きで、人にも勧めやすいですよね。


僕はビートルズ 1~2巻 かわぐちかいじ・藤井哲夫 講談社モーニングKC

これも一応音楽がモチーフ。しかし音楽が主題のひとつでありながら、あまり音のイマジネーションが沸いてくるものではありません。リアリスティックな絵柄とストーリー、確固たるビートルズナンバーのイメージというか音そのものが、力強過ぎて読み手の想像力を拒絶します。もちろんそれが悪いわけではなく、表現法や作中での音楽の扱い方の違いでここまで変わるということなんですが。話の展開上、未知のビートルズナンバーが今後作中に登場する気配があるけれど、作者はそれをどう表現するのか。誰も聴いたことのない音のマンガ表現はとても難しく、先に挙げた神童やBECKでも厳しいものがありました。ハードルは高いですが、作者の力量も抜きん出ています。こちらのイメージをどう刺激してくれるのか楽しみです。


”のだめ”最終巻まだ手つかずです。願わくば、千秋との距離感は第1巻のそれを思い出しつつ終わっていただきたい。のだめはやっぱり変なコでないと、なんてね。

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2010.09.18

杜氏の永眠・酒屋の良心

マンガ読みの間では和歌山の地酒”龍神丸”の作り手として大変有名だった杜氏・高垣淳一さんがお亡くなりになったという知らせ、遅ればせながら先週知ることとなりました。高垣酒造はご隠居されていたお父さまの造りでとりあえず存続する意向とのことですが、高垣杜氏の手による同じ酒はもう飲めないのかと思うと大変残念です。いつも旨い酒をありがとうございました…

知らせていただいたのは和歌山の高垣酒造特約店”みゆき屋”さん。
ご多聞に漏れず、いつか龍神丸の大吟醸無濾過中取りを口にしたいとの下心でお世話になり始めたのですが、抽選ではなく、付き合いの深い客にこそ希少な龍神丸を飲んでもらうというスタンスが信頼できるお店だと思いました。酒量は少ないながらも日本酒は人並みに好きなもので、和歌山の地酒にとどまらず色んな銘酒を紹介してくれるメルマガに導かれ、ずいぶん多くの酒を味わうことができました。川中島・幻舞など本当に旨かった… 

そんなこんなで通販でのおつきあいが1年半ほど続いた今年の5月、突然店主の的場さんから電話がかかってきたんです。「神戸の蔵元に行ったついでに立ち寄ったのだけれど、家の場所がよくわからない」。 …そんなわざわざ!通販でのおつきあいしかない、顔も分からないたった一人の客のために足を延ばして訪ねて来てくれるなんて思いもしませんでした。仕事中の私は残念ながらお会いすることができなかったのですが、手土産の酒粕と共に「そろそろ龍神丸を飲んでいただきたいと思っている」との嬉しいお知らせを残して帰って行かれました。分けていただいた龍神丸の無濾過中取りは今、冷蔵庫の中で日々美味しくなっているはずです。

今回の高垣杜氏の件を知って、高垣酒造の他のお酒も杜氏を偲びつついただきたいと思い、再びみゆき屋さんのお世話になりました。まだ高垣酒造が自前で通販をやっておられたときに試して美味しかった「喜楽里」というお酒です。

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味わい方について手書きのメッセージがついてきました。店主の的場さんからだと思います。高垣杜氏の作ったお酒を本当に愛しておられるのだと思いました。私は冷酒好きなので、以前購入した時も冷やのままで飲んでいた可能性が高く、すなわち喜楽里の本当のポテンシャルを知らないわけです。今度こそじっくりと、今は亡き杜氏の技を味わい尽くします。きっかけをいただいた みゆき屋さんに感謝です。

みゆき屋(新宮)も高垣酒造(有田)も遠いですが、いつか足を運んでご挨拶をと思う次第です。いまはHPも閉じてしまった高垣酒造、また元気に復活されることを祈りたいと思います。

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